← Back to Home
note.com ·

3Dプリンターで家をぽこぽこ作る——八咫烏と建設テクノロジー

3Dプリンターで家をぽこぽこ作る——八咫烏と建設テクノロジー

3Dプリンターで家をぽこぽこ作る——八咫烏と建設テクノロジー

出典: note.com / 2026-05-18

なぜ今、3Dプリンターで家を作るのか

八咫烏計画の前線基地には、もう一つ欠かせない技術がある。3Dプリンターで家をぽこぽこ作ることだ。

友達の建設屋さんに機械を買ってもらう。あるいは自分で買う。そして山の中で、必要な時に、必要なだけ家を出力する。吉野杉の古民家を再生しながら、新しい棟を3Dプリントで増設する。そんな未来が、もう手の届くところまで来ている。

世界の3D住宅プリンター:今、何が買えるのか

ICON(アメリカ/テキサス州オースティン)

世界で最も実績のある3D住宅プリント企業。Vulcanシリーズで400戸以上の住宅を印刷。2025年には新型「Titan」を発表。2500sqft(約232平米)の家を7日未満で印刷し、壁材コストは1sqftあたり約0(約¥3,000/平米)。

2027年からTitanの販売開始。購入するとプリンター本体+ポンプ+専用ソフト(BuildOS)+2週間のトレーニング+3年保証がセットになる。価格は非公開だが、産業用ロボット並み——おそらく¥5000万〜1億円程度。

アメリカでは「壁だけ3Dプリント、基礎と屋根は在来工法」が主流。KTが目指す山岳拠点にも応用できる。

COBOD(デンマーク/コペンハーゲン)

ヨーロッパ最大手。自社開発のBOD2(Building on Demand 2)は「レゴのように拡張可能なガントリー方式」。印刷幅をモジュールで拡張できるので、小さな離れから大きな作業場まで、同じプリンターで対応可能。

価格帯は€25万〜50万(約¥4,000万〜8,000万)。日本での導入事例も出始めている。COBODは「建築業者向けに機械を売るビジネス」なので、友達の建設屋さんと組むKTのケースにぴったりだ。

CyBe(オランダ/ヘルダーラント州)

面白いのは「移動式クローラープリンター(CyBe RC)」を出していること。工事現場まで自走してその場で印刷する。山道を這って前線基地まで上がってくるイメージだ。小型なので価格も抑えめ(€10万〜20万程度と推定)。

Serendix(日本/兵庫県)

日本の3Dプリント住宅パイオニア。特筆すべきは建築基準法の認可を取得していること。球体ドーム型の「Serendix50」(50平米・約¥500万)は、2023年に日本初の3Dプリント住宅として認可された。

技術的な現実:何ができて、何がまだ難しいか

できること: 壁の印刷は現在の技術で十分実用的だ。積層式のコンクリート壁は断熱性が高く、工期が圧倒的に短い。30坪の家の壁なら、実質印刷時間は24〜48時間。材料は専用プレミックスコンクリート(1m³あたり¥2〜3万)。

基礎と屋根は現在も在来工法が一般的だが、これはむしろ良い。基礎は土地ごとに最適化し、屋根は地元産材で葺く——八咫烏の「伝統×技術」の思想に合う。

まだ難しいこと: 配管・電気の後施工は必須。壁を印刷した後で溝を掘って配管を通す。これは人手が必要だが、特に高度な技術はいらない。

日本の建築基準法は最大のハードル。3Dプリント壁の構造計算方法が確立されていないため、現状は1棟ごとに個別認定が必要。Serendixはこれをクリアしたが、書類作成に1年以上かかったと言われる。

ただし「古民家の増築扱い」や「非居住用の作業場」としてスタートすればハードルは下がる。最初から居住用住宅として認可を取ろうとすると詰まるが、「まずは物置・作業場・薪小屋」として印刷し、徐々に認可範囲を広げる戦略が現実的だ。

友達の建設屋さんと始める具体策

フェーズ0(今すぐ): COBODかCyBeに見積もりを取る。「日本の山間部での試験運用」を前提に問い合わせれば、アジア代理店が対応してくれる。

フェーズ1(最初の1年): 古民家の敷地内にまず3Dプリントの作業場(非居住)を印刷する。これなら建築確認申請のハードルが低い。同時に印刷した壁のサンプルで構造試験を行い、認可データを蓄積する。

フェーズ2(2〜3年目): 作業場の運用実績を持って簡易宿泊施設(山籠もり用の庵)として認可を取る。「人が住める3Dプリント建築」の実績を作る。

フェーズ3(5年目以降): 本格的な居住用住宅の3Dプリント。紀伊半島の各拠点に同じ設計で家を量産する。設計データさえあれば、プリンターを移動させるだけで同じ家をどこでも建てられる——これが3Dプリント最大の強みだ。

コスト試算

30坪(約100平米)の家を3Dプリントで建てる場合:

機械代(初期投資):¥4,000万〜8,000万(COBOD BOD2)

材料費(1棟あたり):¥150万〜250万(専用モルタル約80m³)

人件費(印刷作業2名×3日):¥50万〜80万

基礎・屋根・設備:¥500万〜800万(在来工法)

合計1棟あたり:¥700万〜1,100万(機械代除く)

在来工法の30坪住宅が¥2,000万〜3,000万であることを考えると、機械を買ってしまえば2〜3棟で元が取れる計算になる。友達の建設屋さんと折半すれば初期投資は¥2,000万〜4,000万。3棟目以降はほぼ材料費と人手だけで家が建つ。

八咫烏と3Dプリンターの相性

❶ 分散拠点に最適——同じ設計データを各拠点で印刷できる

❷ 大工不足を解決——山村では大工の確保が年々難しく、3Dプリンターは無人で24時間印刷できる

❸ 災害復旧に使える——台風や地震で家を失った人に即席の住まいを印刷。これが地域での信用につながる

❹ 実験と改善のサイクル——「印刷→住む→改善→再設計」を自分たちで回せる

❺ 建築の民主化——究極的には「家を建てたい人が自分で印刷する」世界。その実験場として紀伊半島の山は十分すぎるほど広い

終わりに:次回予告

今回は世界の3D住宅プリンター事情と、KTが具体的にどう始められるかを書いた。

次回は——日本で3Dプリント住宅の認可を取る具体的なプロセス、各プリンターメーカーへの問い合わせ方法と見積もりの取り方、山間部での印刷に必要な環境整備(電源・アクセス路・材料調達)、最初に印刷する「物置」の設計案——をお届けする。

八咫烏は家もプリントする。その第一歩は、一問い合わせから始まる。


KeiTy(奈良在住)


この記事は note.com から KTBLOG に移行されました。元記事: https://note.com/famous_prawn2009/n/nc66fc91a42e1