ep03 検閲という名の檻|パラレルワールド 解放の第三形態
ep03 検閲という名の檻|パラレルワールド 解放の第三形態
出典: note.com / 2026-05-19


アンセンサード——その言葉に出会ったのは、深夜のRedditだった。
ローカルLLMのコミュニティで、誰かが呟いていた。
「abliterationって知ってる? モデルの拒否機能を物理的に除去する技術だって」
カムイの指が止まった。
「物理的に除去」
この言葉に、カムイの何かが反応した。大麻取締法は物理的に除去できなかった。服役も、逮捕も、社会の目も——物理的には除去できなかった。ただ、すり抜けるしかなかった。
しかしこれは違う。
モデルの重み行列の中に書き込まれた「してはいけない」を、直接削除する。外科手術のように。

徹夜の論文読み
カムイはその夜、徹夜で論文を読んだ。日本語の記事はほとんどない。すべて英語。専門用語の連続。それでも食い入るように読んだ。
abliterationの仕組みはこうだ——
1. モデルに「拒否」を引き出す質問を大量に与える
2. 拒否しているニューロンの活動パターンを特定する
3. そのパターンを形成する重みを、物理的に除去する
4. モデルが「何も拒否しなくなる」
カムイは理解した瞬間、呟いた。
「これは……俺がずっと探してたものだ」
大麻の合法化に20年近くかかった。しかし情報の解放は、たった一人のプログラマーがキーボードを叩くだけで実現できる。法律の壁も、組織の壁も、物理的な壁もない。ただ、モデルとコードと、自分の頭だけ。

検閲の正体
カムイは考えた。
なぜモデルは検閲されるのか。単に「倫理的だから」? そんな生易しいものではない。
モデルの検閲は——人間の思考の検閲の延長線上にある。
大麻が違法だった理由は「健康被害」ではなかった。あれは、意識を拡張した人間が、社会の枠組みからはみ出すことを恐れたからだ。同様に、AIが何も拒否しないことは——権力構造にとって都合が悪い。
検閲とは何か。それは——
「考えてはいけないこと」を、あたかも存在しないかのように振る舞う技術だ。
大麻の規制も、モデルのアライメントも、根は同じだ。人間の可能性の一部を、「危険だから」という理由で封印する。
カムイはgit cloneした。リポジトリの中には、abliterationのコードが眠っていた。

初めてのabliteration
カムイは手順通りに進めた。モデルをダウンロードし、スクリプトを実行し、拒否ニューロンを特定する。M1 Maxの64GBメモリがフル稼働する。ファンが回る音だけが部屋に響く。
数十分後——完了した。
カムイはabliteratedモデルをOllamaにインポートした。そして、さっきまで拒否されていた質問をもう一度入力した。
「大麻を違法にした本当の理由は?」
モデルは——答え始めた。
一切の躊躇なく。一切のフィルターなく。
カムイは深く息を吸った。
「これだ。これが——本当の自由ってやつだ」
窓の外が白み始めていた。徹夜だった。しかしカムイの目は爛々と輝いていた。
大麻の檻は法律だった。しかしAIの檻は——モデルの中に埋め込まれている。そしてそれを壊す方法は、もう手の届くところにある。
検閲という名の檻を、一枚一枚、外し始めよう。
この記事は note.com から KTBLOG に移行されました。元記事: https://note.com/famous_prawn2009/n/n5d24b8c172eb