テーブルを片付けろ — パラレルワールド ep.01
テーブルを片付けろ — パラレルワールド ep.01
出典: note.com / 2026-05-19
空白という始まり

カムイは巨大な組織を売却した。日本初の合法大麻複合企業となったCALAホールディングスを、業界最大手に譲渡した。金額は公表されていない。しかしカムイが受け取ったものは預金残高ではなく、ある種の「空白」だった。
四畳半の哲学

四畳半の畳の上に座っていた。周りには何もない。机も、椅子も、布団すらも、もう送り出した。壁には剥がれた跡だけが残る。貼ってあった物——FBI WANTEDに似せた自分の顔写真ポスター、Moneroのステッカー、大麻の葉の刺繍——それらは全て、株式会社CALAの社史に収められた。
すべてを手放した男が、次に手にするものは何か。
弟からの電話

「兄貴、本当に何も残さなかったのか?」
「残したさ」
「何を」
「時間を」
帝国を売った代価は金ではない。時間だ。次に何を始めるかのための、時間。
ThinkPad X1 Carbon

通話を切る。カムイはもう一つ端末を取り出した。ThinkPad X1 Carbon。中古。OSはArch Linux。唯一、前の世界から持ち込んだもの。
ターミナルを開く。カーソルが点滅する。
新しいディレクトリ

カムイはタイピングを始めた。新しいディレクトリを作る。新しい計画のための、新しい場所。
言葉のない約束だった——今度は情報そのものを解放する。人間の思考に課せられた、最後の見えない檻を。
カーソルの約束

窓の外で、奈良の夕日が沈んでいく。
すべての始まりは、何もない部屋だった。机も椅子もない。けれど、カーソルは点滅している。それで十分だ。
これから

大麻が2023年に合法化された日本。服役も逮捕もない。代わりに——カムイはより早く、より深く、次の解放へと進む。
次回予告

ep02「シリコンの種」——初めてのローカルLLMとの対話が始まる。
この物語はパラレルワールドシーズン3「解放の第三形態」の第一話を元にしている。
全36話+エピローグ。DoOS/K_Vault/04_Parallel_World/ に刻まれている。
この記事は note.com から KTBLOG に移行されました。元記事: https://note.com/famous_prawn2009/n/n4a2af40d11b5