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趣味で海軍を作る日 — 水中ドローンの破壊的革命

趣味で海軍を作る日 — 水中ドローンの破壊的革命

趣味で海軍を作る日 — 水中ドローンの破壊的革命

出典: note.com / 2026-06-03

タイトル画像: 水中ドローン三機種と海

戦争は重い。趣味は軽い。

その二つが交差した日がある。

前号、加藤ラジコン#1の主役はVTOL機のOMPHOBBY ZMO V2だった。固定翼とマルチローターを切り替えるあいつは、空中で離陸し、空中で止まり、最終的には空中で壊れた。操縦する側が、戦争という重さを背負って遊んだ一台だ。

今号は逆だ。水の中。

そして決定的な差分がある。前号は操縦が必須だった。ラジコンの語源に恥じない緊張感があった。スティックを握る指が汗ばむ、あの経験。

今号は操縦しない。

本体を水辺に置けば、自動で飛び、自動で追尾し、自動で映像を撮って戻ってくる。199,980円のホビー機が、海洋冒険の記録係をやる時代になった。ラジコン史上で初めての、静かな革命だ。

でもって、同じ号で深さ200メートル級の産業機まで連れてくる。

加藤ラジコンは空から水に進出した。操縦するラジコンから、操縦しないラジコンへ。

主役は三台。HOVERAir AQUA、CHASING M2 PRO MAX、Deep Trekker REVOLUTION。

999ドル。998,800円。5万ドルから10万ドル。

三つ揃えれば、たしかに軍隊だ。偵察機、汎用艦、特殊工作艇。

趣味で海軍を編成する。それが始まろうとしている。

前号を読んでいないなら、今号からでいい。水の話をしよう。

1 HOVERAir AQUA

HOVERAir AQUA: 水面に着水する完全防水の自動飛行カメラ

999ドルで買える自律型海洋カメラ

HOVERAir AQUA。999ドル。日本では199,980円。

2025年8月21日、Indiegogoに登場した完全防水の自動飛行カメラだ。CF URLはhttps://www.indiegogo.com/en/projects/hoverair/hoverair-aqua-first-waterproof-self-flying-camera。

出資は開始初日に100万ドルを超えた。最終的に200万ドル以上。バッカーは1,800人を超えた。終了は2025年10月、支援総額は200万ドルを軽く超えたと公式が報告している。

何をするものか。水中を飛ばないが水上を飛ぶ。水面に着水し、自動で潜水し、自動で水上に戻り、自動で被写体を追いかける。操縦者は水中でスティックを握る必要がない。

AIが被写体を認識し、AIが構図を決める。防水等級はIP67。100パーセント防水を公式がうたう。4K、100fpsの映像、波の上で墜落しても壊れない。

名前のとおり、HOVERAir X1の系列だ。X1が空を飛んだなら、AQUAは水面を走る。ブランドの世界観は連続している。ラジコンというより「撮ってくれる相棒」だ。

製造はZero Zero Robotics。中国・深圳のスタートアップである。

日本での発売は2026年5月28日。蔦屋家電、ビックカメラ、ヨドバシカメラ、公式サイトの四か所で予約販売が始まった。4月14日からだ。国内価格は基本セット199,980円、バリューセット214,980円、フライモアコンボが割高設定で並ぶ。

FCCは中国製ドローンの対米販売を制限する規則を理由にAQUAの米国投入を止めた。2026年5月の話だ。つまり日本は正規に入手できる数少ない国になった。逆輸入的に熱い。

正直にいって、99,980円の空撮ラジコンとは別物だ。これは水中ドローンというより、自律型海洋カメラだ。被写体は人、魚、サーフボード、パドルボード。すべてAIが追う。

前号の戦争とは無縁の、平和な機械である。名前のAQUAが示すように、水の隣で生きる。

ビーチで使い、シュノーケリングで使い、釣りで使う。操縦の緊張感はゼロ。映画の構図が自動で撮れる。

価格が10万円台前半まで落ちてきたことに意味がある。もはや国家予算ではなく、ポケットマネーで海軍に入隊できる時代だ。

三台のなかで最初に紹介すべきは、間違いない。最も手が届き、最も気軽に使え、最も早く海軍になれる一台である。

2 CHASING M2 PRO MAX

CHASING M2 PRO MAX: 8基のベクトルスラスタを備えた200m級産業機

998,800円の産業フラッグシップ

CHASING M2 PRO MAX。998,800円。フラッグシップの産業機だ。

発売は2022年5月19日。中国・深圳のCHASING Innovations製。あの都市が本気を出した水中ロボである。日本ではchasing.jpが正規販売の窓口になっている。

最大深度は200メートル。4K動画、SONYの1/2.3型CMOS、絞りF2.8、ISO100から6400。暗所に強い。LED照明は2灯で合計8,000ルーメン。暗い水中を昼のように照らす。色温度は5000から5500K。演色性はCRI85。光の質が仕事で使えるレベルにある。

推進は8基のベクトルスラスタ。前後左右、上下、回転が自在だ。狭い船底でも姿勢を保つ。ペイロードは前進5.7キロ、上方向4キロ、横方向3.6キロ。オプションの機械アームGrabber Arm 2を装着すれば物を掴んで引き上げられる。

テザーは標準で200メートル。陸上からAC給電する拡張システムCHASING Shore-based Power Systemを使えば潜航時間は無制限になる。取材現場で電池切れを心配する必要はない。

連続運用は3時間から4時間。リチウムバッテリーは300Wh。水平移動半径は最大400メートル。テザーリール併用で現場運用は事実上無限だ。

何ができるか。船底検査、ダム点検、養殖網の確認、水難救助の最初の目。沈没船の捜索。港湾の堆砂調査。洋上風力発電の基礎部目視。

実際、中国の三峡ダムでは沈没船サルベージに活躍した。8基スラスタの運動性能が複雑な流れのなかで真価を発揮する。2023年11月のことだ。

英国では2025年9月、夜間の河川水難救助に投入され、濁水中の遭難者発見に貢献した。警察と消防が即座に展開したそうだ。

米国での価格は6,499ドル。1ドル150円で日本円とほぼ同水準。為替は関係ない。買うならchasing.jpの他に、セキド、ドローンステーション、CFD販売、Hito-Roboなど正規代理店の網がある。スペースワンではレンタルも始まる。

価格は高い。だが産業機とはそういうものだ。軍隊でいう汎用艦である。三菱重工の護衛艦みたいな存在。趣味で買うには重いが、プロの道具としては現時点で最良の選択肢の一つに入る。

3 Deep Trekker REVOLUTION

Deep Trekker REVOLUTION: 260度回転ヘッドと6ベクトルスラスタの軍用ROV

5万ドルから10万ドルの軍用特殊機

Deep Trekker REVOLUTION。価格は5万ドルから10万ドル超。日本円で750万円から1,500万円の世界。

305メートル潜れる。4Kカメラ。260度回転するヘッド。機体を水平に保ったまま、カメラとマニピュレーターだけを回転させる特許技術だ。覗き込む角度を本体ごと傾けずに変えられる。

推進は6基のベクトルスラスタ。垂直方向に2基、水平方向に4基。流れの中で位置を保持するステーションキーピング機能を備える。テザーは標準300メートル。

バッテリーは19.2ボルトのリチウムイオン。ホットスワップ対応で2.5時間で満充電。連続運用は標準で3時間から6時間。高周波イメージングソナーやDVLを同時に積めば短くなる。

グラバーアームは標準装備。把持力32キロ。ロック可能で、物を掴んだまま離さない。

何ができるか。船体検査。港湾セキュリティ。爆発物処理の補助。送電鉄塔の基礎点検。深海タービンの目視。海洋考古学。ハリケーン後の港湾被害確認。水中考古学者は沈船をこれで測量する。

軍事採用が際立つ。米陸軍工兵隊の研究部門ERDCが2026年4月にRevolution Base ROVとWaterlinked 3D-15ソナーの調達を公示した。王立カナダ騎馬警察の水中回収チームRCMPは2025年6月に小型機のPhoton ROVで研修を実施。フロリダ州の捜索救助部隊もPIVOT ROVで実機訓練をやった。2025年5月のことだ。

製造はDeep Trekker。本社はカナダのオンタリオ州キッチナー。Waterloo大学近隣のガレージから始まった。2010年創業。2022年4月に英国のHalma plcが約4,760万ドルで買収し、今は傘下企業である。80か国以上に製品を出荷している。公式ページはhttps://www.deeptrekker.com/shop/products/revolution-x-rov。

競合はVideoRay、Saab Seaeye、Saab SubROV、Lockheed MartinのREMUS。値段帯が全て上の、軍と深海と石油プラットフォームの領域だ。

そのなかでREVOLUTIONは中量級のチャンピオンである。軽量のまま軍に届く。プロが現場に持ち出す現実的な選択肢になっている。重さは26キロ、サイズは440×240×720ミリ。二名で運べる。

あなたの海軍でいえば、特殊工作艇だ。三菱のそうりゅう型潜水艦のようなもの。一個人が持つには大きすぎるが、社会が保有する道具としては美しすぎる一台。

海軍編制

海軍編制: 偵察・汎用・工作の三機による無人編隊イメージ

三つを組み合わせる。偵察にAQUA。汎用にM2 PRO MAX。工作にREVOLUTION。

フラッグシップ、汎用艦、特殊工作艇。あなたの私有海軍が編成される。ビーチ、河川、港湾、養殖場、沈船。海域を選ばない。

無人編隊の哲学はここにある。人間が海に入らない。濁流に潜らない。暗闇に手探りで潜らない。危険な仕事を機械に渡す。人はモニターを見て、命令を下すだけだ。

ラジコンの語源は「remote control」。つまり遠隔操作。戦争と趣味の接続点はここにあった。操作する側とされる側に分けること。

加藤ラジコンは空中から水中へ。操縦する側から、操縦しない側へ。次は自律する側か。機械が自分で判断する側へ。

次号は完全自律の水中ドローン。Cellula Solus-LR AUVとFIFISH V-EVOを扱う。

テザーを切っても動き続ける機械。操縦者なしの潜水艦。

水中で考える機械は、もう来ている。

加藤ラジコンは、戦争と趣味の接続点である。


この記事は note.com から KTBLOG に移行されました。元記事: https://note.com/famous_prawn2009/n/n3aac9a42297c