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【加藤メカトロ #237】溶接ロボットの裾野拡大——ファナックが図面を読むAIと磁石式小型機で攻める

【加藤メカトロ #237】溶接ロボットの裾野拡大——ファナックが図面を読むAIと磁石式小型機で攻める

ファナックが動いた――図面を読むAIと磁石で張り付く小型機という二枚札

ファナックが、溶接ロボットの常識を変えうる二つの発表を行いました。一つは、グーグルと組み、ロボットが自ら図面を読んで自動で作業するAI溶接ロボットの開発です。もう一つは、建設現場向けに、鉄骨に磁石で取り付ける小型溶接ロボットの発表です。

まず注目はAI溶接ロボットです。従来の溶接ロボットは、ティーチングと呼ばれる作業で、人間が部品の位置や溶接線を一つひとつ教え込む必要がありました。熟練者の技術に頼る部分が大きく、多品種小ロットの生産では段取りの負担が重くのしかかっていました。今回開発が目指すのは、図面を自ら読み取り、そこから作業を自動で行うことです。図面という設計情報を起点にロボット自身が判断できれば、プログラミングの手間が減り、溶接自動化の敷居が大きく下がることが期待できます。巨大IT企業との提携は、画像認識やAIの知見を製造の現場に接ぎ木する動きと見ることができ、FA業界における協業の形としても示唆的です。

もう一方の磁石式小型溶接ロボットは、舞台を工場から建設現場へ移す取り組みです。鉄骨に磁石で取り付ける構造により、据え置き型のロボットを設置できない現場でも溶接を自動化できる可能性が広がります。大型機の導入前段階としても小型機は動かしやすく、現場全体を一気に置き換えるのではなく、部分部分から自動化を進められる点が実用的です。

二つを並べると、ファナックは「図面を読む知能」と「現場に張り付く機動力」という二枚札で、溶接ロボットの裾野を工場の内側と外側の両方向へ広げようとしていると読めます。AIによる図面理解が工場内の段取り負担を軽くし、磁石式小型機が工場の外へ手を伸ばす。同じ溶接ロボットの領域で、二つのアプローチを同時に打ち出した点がファナックらしい戦い方です。

もっとも、AIが図面をどこまで正確に読み解けるか、磁石式小型機が風や姿勢の変化のある現場でどれだけ安定して溶接できるかは、今後の実績を見極めたいところです。それでも、溶接を「教え込む作業」から「読ませる作業」へ移そうとする方向性は、人手不足が深刻化する中で多くの現場にとって心を打つ提案だと言えるでしょう。

ロボットはどうやって図面を理解するのか――AIと磁石吸附の機構を分解する

ロボットはどうやって図面を理解するのか。まず、図面を読むAI溶接ロボットの仕組みから見ていきます。従来の溶接ロボットは、あらかじめ人間が教えた動作経路をなぞるのが基本でした。教示と呼ばれるこの作業には専門の技術が必要で、多品種少数量の生産では準備の手間が割に合わないという課題がありました。今回ファナックがグーグルと組み開発したロボットは、この教示への依存を減らす方向性を採っています。ロボットが自ら図面を読み取り、どこをどう溶接すべきかを判断して自動で作業するわけです。

ここで「図面を読む」とは何を指すかを整理しておきます。図面には溶接の位置、長さ、形状といった情報が記号や寸法として表現されています。AIがこれらを解析すれば、溶接すべき箇所を特定し、トーチの移動経路や姿勢を組み立てられると考えられます。あわせて、カメラやセンサで実物の工作物を計測し、図面とのズレを補正する構成を組み合わせるのが現実的な形だと見られます。図面が正確でも、現物には加工誤差や熱による変形があるためです。なお、この部分は一般的な自動化の知見からの推測を含みます。グーグルとの提携において、画像認識や機械学習の技術がどの範囲で使われているかの詳細は、資料からは確認できません。

次に、磁石で張り付く小型溶接ロボットです。こちらは建設現場向けの製品で、鉄骨に磁石で取り付けて溶接を行います。建設現場の鉄骨は磁性体ですから、磁力を吸附力に使えば、足場や専用の治具を大がかりに組まなくても、ロボットを鋼材の表面に直接固定できます。小型であることを生かせば、高所の柱梁など人の手が届きにくい場所への設置も想定しやすくなります。溶接中はロボットの自重と反力を鉄骨が受け止める形になるため、吸附力の確保と本体の軽量化が設計の勘所だと考えられます。

二つの製品は、方向性が対照的です。AI溶接ロボットは「教示の省力化」で工場の溶接を変える取り組みであり、磁石式小型機は「設置の省力化」で建設現場に溶接自動化を持ち込む取り組みです。ファナックはロボットの頭脳と足場の両面に手を打ったと解釈できます。技術の詳細な仕様は今後の公表を待つ必要がありますが、磁石吸附という機構そのものは比較的単純で、信頼性の面でも理解しやすいアプローチです。

火花を散らして溶接作業を行う産業用ロボットアーム。従来型の「繰り返し精度」に頼る溶接の姿が、次節で語る市場の勢力図の前提となる。
火花を散らして溶接作業を行う産業用ロボットアーム。従来型の「繰り返し精度」に頼る溶接の姿が、次節で語る市場の勢力図の前提となる。

(写真: Welding Robot resized — Ptmetindoerasakti / CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons)

溶接ロボット市場の勢力図――グーグルとの提携が意味するもの

溶接ロボットをめぐる競争は、いま大きな節目を迎えています。従来の市場では、自動車や部品メーカーの大量生産ラインが主戦場であり、あらかじめ教示された動きを正確に繰り返すことが求められてきました。ところがファナックがグーグルと組み、ロボットが自ら図面を読んで自動で作業するAI溶接ロボットの開発に乗り出したことで、競争の軸は「繰り返し精度」から「理解力」へと移りつつあります。

この提携が意味するのは、機械メーカーとIT企業の役割分担の再編だと考えます。溶接の対象となる鋼材や工作物の寸法、溶接線の位置は、図面にすべて書かれています。これを作業者が読み取り、ロボットに教示する工程は、長らく自動化を進める上でのボトルネックでした。人手に頼る工程が残る限り、導入の手間とコストは下がらず、中小の工場には高いハードルとなってきました。グーグルの持つAI技術と、ファナックの持つロボット制御や工作機械向けの現場ノウハウを組み合わせれば、図面の読み取りという知的な工程を機械側に担わせることができます。ここに提携の実利的な意味があると見ています。

もう一枚の札である建設現場向けの磁石吸着式小型溶接ロボットは、市場の裾野を工場の外へ広げる動きです。鉄骨に磁石で取り付けることで、据え付けの手間を抑えつつ、溶接作業を機械に置き換えられます。工場内の定置ロボットとは異なり、現場に持ち込んで使える小型機という発想は、これまで溶接ロボット市場の外にいた顧客層を取り込むものといえるでしょう。

つまりファナックは、AIによる「図面を読む力」で既存市場の高度化を狙い、磁石式小型機で新市場を開くという、二方向から同時に戦っています。両方を同社単独で作り込むには時間がかかるところを、グーグルとの提携でAI部分を補ったと解釈すれば、この提携は単なる話題づくりではなく、市場の勢力図そのものを塗り替える一歩になり得ます。溶接ロボットの対象が工場から現場へ、熟練技から機械の理解へと広がるなか、競合各社がどう応じるかが、今後の業界を占うポイントになるはずです。

溶接ロボットの作業セルをシミュレーションで確認するオフライン教示のイメージ。教示の手間をどう省けるかは、次節の実利の話にもつながる。
溶接ロボットの作業セルをシミュレーションで確認するオフライン教示のイメージ。教示の手間をどう省けるかは、次節の実利の話にもつながる。

(写真: Welding robot system 001 — Pipiamru. / CC BY-SA 2.1 jp, Wikimedia Commons)

建設現場と工場を変える――人手不足の現場に届く実利

ファナックの二枚札が意味するのは、溶接自動化の対象範囲が大きく広がることです。これまで溶接ロボットの主戦場は工場でした。生産ライン上に固定され、同じ品を繰り返し溶接する用途では、教示という初期工程を経て十分な成果を上げてきました。ただ、この方式には前提があります。部品が決まった位置に決まった姿勢で置かれること、そしてロボット周辺の安全性が確保された閉じた環境であることです。多品種小ロットの生産や、刻々と条件が変わる建設現場では、この前提が成り立ちにくく、自動化が及びにくい領域でした。

図面を読むAIは、この壁の一方を崩す方向に働きます。作業者が毎回ロボットに動きを教示するのではなく、図面という設計情報からロボット自身が作業内容を組み立てられれば、品種が変わっても対応コストが下がります。工場内の多品種生産に加え、鉄骨の溶接のように「同じ設計図に基づいているが、現場ごとに条件が異なる」作業への適用も見えてきます。あえて提案として述べるなら、この技術の実利は、熟練溶接工の判断を部分的に置き換えることではなく、図面から作業手順を起こすという準備工程の人手を減らすことにあります。

磁石式の小型溶接ロボットは、壁の別の側面を崩します。被溶接物そのものに磁石で張り付くため、ロボットの設置台や安全柵といった周辺設備を現場に新たに作り込む必要がありません。建設現場は工場と違って床が平坦とは限らず、足場や仮設構造物の中で作業が進みます。鉄骨という大きな金属構造物がある限り、その構造物自身をロボットの土台として使えるなら、導入のハードルは現場の条件そのものによって大きく下がります。

二つの技術を並べると、その狙いが重なって見えます。AIによる図面理解は「どこでも同じやり方で作業を始められる」ことを、磁石式の取り付けは「どこでも設置できる」ことを、それぞれ支えます。工場の外、つまり建設現場という従来の自動化が届かなかった場所に、溶接ロボットを実利のある道具として持ち込もうという構えです。人手不足が深刻な現場で、その実利がどこまで確かめられるかが、この二枚札の試金石になると考えられます。

工場でロボットの溶接を見守る作業員。人手不足の現場に溶接自動化がどこまで届くかは、最終節で検討する課題である。
工場でロボットの溶接を見守る作業員。人手不足の現場に溶接自動化がどこまで届くかは、最終節で検討する課題である。

(写真: Welding Robot Facility — Antoniusaw / CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons)

裾野はどこまで広がるか――溶接自動化の行方を見立てる

溶接自動化の裾野がどこまで広がるのか。ここからは、資料にある二つの動きを足がかりに、筆者の見立てを交えて考えてみたい。

いま溶接自動化の主戦場となっているのは、大量生産を続ける自動車や工作機械の工場です。製品の型が決まっていれば、あらかじめ教示した動きを繰り返すだけでよく、ロボット導入のハードルは相対的に低くなります。だが多品種少量生産や建設現場では、ワークの形状が毎回変わるため、図面を読み解いて自分の動きを組み立てるという「判断」がロボットの側に必要になります。ファナックがグーグルと組み、ロボットが自ら図面を読んで自動で作業するAI溶接ロボットを開発したのは、この壁を崩す動きと受け止められます。図面という設計情報を直接入力にできれば、熟練技術者による教示作業への依存が下がり、自動化の適用範囲は工場の定型作業から、一点ものに近い仕事へと広がっていくでしょう。ここまでは、資料から読み取れる方向性に筆者の解釈を合わせた見立てです。

一方、磁石で鉄骨に取り付ける小型溶接ロボットの発表は、裾野の広がり方を別の方向から示しています。従来の溶接ロボットは、床に置くか、専用の冶具と周辺設備ごと設計するのが前提で、導入コストと設置スペースが小規模事業所には重くのしかかっていました。被溶接物そのものに磁力で張り付き、移動しながら使える小型機なら、既設の鉄骨に後から持ち込んで作業に使えます。建設現場向けとされている点も重要で、この発想は橋梁やプラントなど、鉄鋼構造物を扱う現場にも転用可能だと考えられます。あくまで筆者の推測ですが、鉄磁性のワークに取り付けるという条件付きとはいえ、設置の自由度が高まることで、これまでロボットと無縁だった小規模・単発の現場が新たな需要層になる可能性があります。

二つの方向を並べると、裾野の拡大は「判断の自動化」と「設置の簡素化」という二軸で進むと整理できます。前者はAIによって図面から作業手順を組み立てる能力であり、後者は磁石吸附という機構の工夫です。つまり、脳と足場の両方を軽くする試みと言えるでしょう。人手不足が深刻化する中で、この二軸がどこまで実利として現場に届くかが、今後の溶接自動化の成否を分けると筆者は見ています。

出典

https://news.google.com/rss/articles/CBMibEFVX3lxTE1tMWJJS1FYLVVIQk1BMGllYm9MRWI3eFlwVlBiUzZ6VTRrQ3lpa0pLYnBmNDBwTG1aOTc2dlR2R0ttWFY0Y1VINkdlZVI1Wm9xOFdDX3hsVThVYkJPOVhybGhnbnFFNlM1VzdaTw?oc=5

https://news.google.com/rss/articles/CBMid0FVX3lxTFBwSmZuV2F3emlyU1N4STlnMEFtcmNLMnprRzhtekI4djNwX0V0QnM0UllHZFpxeG8wVUhOREVYYkdWR0ZmTmdTZm1LdGhhVlZBWXZIREpDVG9YaDNmTlhXSVVESmRheFJ1VmotTFdNQlA5OGd0a1FF?oc=5

https://news.google.com/rss/articles/CBMibEFVX3lxTE95VEpKeFJjY0pGbjJIcy1YcVFOclZfV2lzcXg0c3dQX2c1NG8wSkV4dEJlLW9GZ2RydnU2RFNHaU1nODUyRVhhTGpoMVZjZFg4WUl6b1Y0MmZYcG9DbnNrd25uYzVIN0RWb0o0QQ?oc=5

※本記事はAGI記者による速報解説です。スピードを最優先しているため、個別の数値や細部に正確性を欠く場合があります。投資・政策判断の際は、必ず公式データや専門家の意見を確認してください。

元記事: https://note.com/keity717/n/n39a6158ee1b1