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KT研究 ·

【86】奈良女子大に「大規模言語モデル特論」はもうある——9人修了の年に開く窓

2027年度担当教員一覧PDFに「大規模言語モデル特論」が実在する。講義を作る夢は、既存のLLM講義に乗る戦略に変わる。

【86】奈良女子大に「大規模言語モデル特論」はもうある——9人修了の年に開く窓

いま手元に二つの締切がある。NAIST情報科学領域の第2回出願(9/28〜30)と、その前提になる社会人受入内諾書の取り付け(8月中)。残り日数を数えながら、奈良女子大学の入試関係PDFをもう一度洗っていた。北極星の相手先を、願書の字面で確認しておきたい——そういう作業だった。

そこで一行、目が止まった。

「大規模言語モデル特論」。

令和9年度(2027年度)大学院の担当教員一覧PDF。情報環境学専攻の特論科目がずらりと並ぶ中に、コンピュータアーキテクチャ特論、ソーシャルシステム特論、計算理論特論……と並んで、大規模言語モデル特論がある。私がpdftotextで自分の目で確認した。転記ではなく、大学のサーバーから落とした原本に印字されている。

講義を作る、から講義に乗る、へ

この一行が意味するのは単純だ。奈良女子大はLLM教育を既に正課カリキュラムに組み込んでいる。昨今の「AIリテラシー」講話のことではない。大学院の専門科目として、単位がつく形で存在している。

生活情報通信科学コースの担当は須藤克仁教授。音声・言語・コミュニケーションを研究領域とする研究室(Lab4SLC)の主だ。同時通訳と音声技術を軸に、NAIST中村哲研究室との共同研究を続けている人で、2026年度の国内発表では「声質変換による原話者音声出力を行う音声から音声への同時翻訳システム」(情報処理学会NL研)が出ている。

私の北極星は「奈良女子大学でAIを教える」だった。これまで頭の中では、自分が講義を一から立ち上げる絵しか描いていなかった。が、実態は逆だった。講義の席は既にある。空いているのは教える側の席のほうだ。

NAIST渡辺研で研究を始める2027年春以降、外部講師としてこの科目に接続する——そういう筋が、願書のPDFの中に物理的に存在していた。ゲスト1コマからでいい。まず乗る。講義を作る夢は、その後で膨らませればいい。

M2が9人いるという数字

もう一つ、数字を読んでいた。Lab4SLCのメンバーページ(8月8日更新)。

  • M2:9名
  • M1:2名
  • B4:5名

この形が何を言っているか。2027年3月に9名が修了する。研究室としては例年より多い新M1の受け入れが必要になる年が、2027年度なのだ。B4が5名いるから内部進学の母数はあるが、外部からの扉も広がる可能性が高い。

偶然にもNAIST進学と同年である。研究室の受け入れ枠が開く年に、隣の大学から接点を作りやすい。住所で言えば奈良女子大とNAISTは包括連携協定(2019年調印)で結ばれている。人材の流れを作るのに、これほど都合のいいタイミングはない。

学生のレベルも見ておいた。現在のM1・M2は人工知能学会全国大会で発表している。米田碧弥さんは日本語文法誤り訂正(ナ形容詞、サブワード語彙サイズの影響)、横山れんさんは動物音声の書き起こし(ISPA: Inter-Species Phonetic Alphabet)。「研究で語れる」教育が学部4年から回っている研究室だ。教える側で入っても、学ぶことが多いはずだ。

同時翻訳と、電話の向こうのおばあちゃん

須藤研の技術的路線を、つるまいに引きつけて読む。

声質変換を伴う音声間同時翻訳——話者の性別や年齢層に応じた声で出力する翻訳システム。これは現在組み込んでいるつるまい電話自動化(予約881件・音声184件の実績を持つ移動支援の音声対応)と、問題設定がまっすぐ重なる。高齢者の話し相手を作るとき、「誰の声で喋るか」は些事ではなく本体だ。方言、声の年齢、語尾の温度。その設計思想を、学術の側が既にやっている。

地域の実務と大学の研究が、同じ問題を見ている。橋を架けるのは技術ではなく、利害の一致だ。この一致に気づけただけでも、PDFを洗った甲斐があった。

もう一本のパイプ:リカレント教育

募集要項には「社会人リカレント教育プログラム特別選抜」の専用様式(入学志望理由書)がある。従来の社会人特別選抜とは別枠で、社会人の再入学を制度化したものだ。

これは将来、つるまい地域のシニア層を大学のAI教育に接続する窓口になり得る。RFIで実証した電話自動化の実績→地域の社会人を大学院へ——第二の線として描いておきたい。大学院生を育てる線と、地域の市民を呼び込む線。二本あれば、奈良女子大での教育は持続する。

なお6月に出た担当教員変更の訂正PDFは生活文化学専攻のみの影響で、情報環境学専攻・須藤教授の担当は変わらない。ここも確認済みだ。

確認事項として残す

  • NAIST社会人受入内諾書:8月中が目処。いま最優先で動かすべきもの。
  • 須藤教授への接触は、NAIST内定後が自然。ゲスト講義のオファー材料は今回のPDFで揃った。
  • 2027年度のLab4SLC受け入れ動向は年度末にもう一度確認する(B4の内部進学で満杯になる可能性もある)。

北極星は遠い星だと思っていたが、座標を測り直したら、既に科目表に印刷されていた。あとは自分がそこへ歩いていくだけだ。