【加藤宇宙開発 #183】H3、8号機失敗の原因は衛星台座の剥離か——6・9号機の成功で年6~8機態勢へ
H3ロケット8号機、衛星台座の剥離が疑われる飛行中破壊——何が起きたか
H3ロケット8号機の打ち上げが失敗した原因として、衛星を搭載する台座の内部で剥離が発生し、飛行中に破壊へと進んだ可能性が指摘されています(読売新聞)。また、衛星を載せる台座の製造に異常があった疑いがあり、現在も原因究明が続けられていると日本経済新聞が伝えています。
ロケットの打ち上げでは、先端部分で衛星を台座に固定したうえで、飛行中に予定の軌道へ投入します。台座は衛星を直接支える部品であり、想定外の力がかかったり材料の結合が不十分だったりすると、飛行中の振動や荷重によって剥離や破壊が進む恐れがあります。今回の失敗では、台座内部の剥離が飛行中の破壊につながったとみられていますが、これは報道内容に基づく見方であり、最終的な原因の確定は今後の調査を待つ必要があります。
製造異常が原因とすれば、設計そのものではなく、個体の作り込みの段階に問題があったことになります。ただし、製造工程のどこで、なぜ剥離につながる状態が生じたのかは資料からは確認できず、現段階では「台座の製造に異常があった疑いがある」という報道の範囲にとどめるのが妥当です。
失敗が製造段階の問題に起因する場合、通常は検査の強化や工程の見直しによる再発防止が図られます。剥離という現象は外部から目視で発見しにくく、飛行中に初めて顕在化するケースも一般には知られているため、究明には飛行データの解析や実物の詳しい調査が欠かせないと考えられます。
なお、8号機の失敗以前にも、H3ロケットは計画上の課題を抱えた時期がありました。6号機の打ち上げ成功によって、ロケットは予定の軌道に投入され、「危機的状況」から半年ぶりに脱却したと読売新聞は報じています。その後、JAXAは9号機を打ち上げ、「みちびき」7号機の軌道投入に成功しています(sorae)。こうした流れの中で発生した8号機の失敗は、台座という衛星とロケットをつなぐ重要な部品の品質確保が打ち上げの成否に直結することを改めて示す出来事と言えます。今後、H3ロケットは年6〜8機の打ち上げ体制が目指され、三菱電機が人工衛星の製造面で下支えする予定です(日本経済新聞)。原因究明の進展は、こうした体制の信頼性を左右する重要なポイントになると考えられます。

つくば宇宙センターに展示されたH3、H-IIB、イプシロンなど日本のロケットの縮尺模型。H3の信頼性をめぐる議論は、次の台座の技術的仕組みへとつながる。
(写真: Spacecraft models at Tsukuba Space Center 6 — Syced / CC0, Wikimedia Commons)
衛星台座の製造異常か——剥離が飛行中に進む技術的な仕組み
H3ロケット8号機の失敗では、衛星を搭載する台座の内部で剥離が発生し、飛行中に破壊が進んだ可能性が指摘されています。読売新聞の報道によれば、台座内部に剥離があったか、飛行中に破壊が進んだとされ、日本経済新聞も、衛星を載せる台座の製造に異常があった可能性があり、原因究明が続いていると伝えています。ここでは、剥離がなぜ飛行中に問題となるのか、その技術的な仕組みを整理します。
ロケットの構造は、飛行中に非常に大きな力を受け続けます。打ち上げ直後にはエンジンの推力で機体が強く押し上げられ、その後も加速、大気圏通過時の空気力、姿勢制御の操作など、荷重のかかり方が絶えず変化します。さらにエンジン燃焼に伴う振動や音響も機体全体に伝わります。地上で問題なく見える部材でも、こうした繰り返される荷重や振動を受けると、微小な欠陥が起点となって損傷が広がることがあります。
剥離とは、一見一体化している材料の内部で、層と層の間の接合がはがれた状態を指します。積層構造や接合構造を持つ部品では、外側からは剥離の存在が分かりにくく、内部の微小なはがれは検査でも見逃されることがあります。この点は一般論であり、8号機の台座で検査を見逃した事実が確認されたわけではありません。
台座のような構造部材に剥離が生じていると、飛行中の荷重がかかるたびに、はがれた端に応力が集中しやすくなります。荷重がかかっては緩むことを繰り返すうちに、はがれが少しずつ進み、ある時点で急速に広がる可能性があります。剥離が進んだ部分は力を分担できず、その分を隣接する領域が負担するため、破壊が加速度的に進むことになります。地上の静的な状態では破壊に至らなかった欠陥が、飛行という過酷な環境で進展し、破壊につながる——これが剥離型の損傷がとくに危視される理由です。
8号機については、台座内部の剥離が飛行中の荷重や振動のもとで進み、破壊につながった疑いが報じられているものの、剥離がなぜ生じたのか、製造工程のどの段階に起因するのかは確定していません。日本経済新聞が「異常か」と伝えるにとどまる通り、製造異常との因果関係は現時点では断定できません。
一方、H3は失敗後も前進を見せています。6号機の打ち上げに成功し、ロケットは予定の軌道に投入され、読売新聞は「危機的状況」から半年ぶりに脱したと伝えました。またJAXAは9号機を打ち上げ、「みちびき」7号機の軌道投入に成功しています。今後はH3を年6~8機の打ち上げへ移行させ、三菱電機が人工衛星製造の面で下支えする体制が示されています。失敗の原因究明と安定した打ち上げ態勢の構築を、今後も注視していく必要があるでしょう。

種子島で観衆が見守る中、H3ロケットが炎と煙を上げて打ち上がる様子。この打ち上げ成功が「危機的状況」からの脱却を示す実績として次節で語られる。
(写真: U S , Japan launch the QZSS-HP in first bilateral national security space cooperation effort (8853513) — U.S. Air Force photo by Senior Airman Jacob Wood / Public domain, Wikimedia Commons)
6号機と9号機の成功——計画と実績が示す態勢の回復
H3ロケットの開発・運用において、失敗の報告と同時に確認できるのが、直近の成功実績です。読売新聞の報道によれば、6号機の打ち上げは成功し、ロケットは予定の軌道に衛星を投入しました。この成功により、H3をめぐる状況は「危機的状況」から半年ぶりに脱却したと伝えられています。失敗や打ち上げ延期が続く中で予定どおりの軌道投入を果たしたことは、打ち上げ態勢そのものが機能しうることを実績として示した出来事といえます。国の基幹ロケットにとって、予定した軌道への投入能力を取り戻すことは、その後の計画全体を進めるうえでの前提となる点で、重みのある成功でした。
さらに、soraeの報道によれば、JAXAはH3ロケット9号機を打ち上げ、「みちびき」7号機の軌道投入に成功しました。9号機の成功は、6号機の成功が偶然でなく連続性を持つことを裏付ける実績です。準天頂衛星「みちびき」のように、国民生活に関わる衛星をH3で確実に軌道に乗せられることが示された点は、機体の信頼性を評価するうえで重要と考えられます。
6号機と9号機の成功と8号機の失敗とを並べて見ると、打ち上げの成否を分けた要因が機体全体の設計ではなく、個別の製造品目に起因する可能性が見えてきます。読売新聞の報道では、8号機の失敗をめぐり、衛星搭載の台座内部で剥離が生じ、飛行中に破壊が進んだ可能性が伝えられています。また、日本経済新聞は、衛星を載せる台座の製造に異常があったか、原因究明が続いていると報じています。台座の剥離が飛行中に進んで破壊に至ったとすれば、問題は特定部品の製造工程に絞り込まれるはずで、原因究明と対策を経れば運用を再開できる構造にあると見られます。もっとも、これは資料から読み取れる見立てであり、原因の詳細は究明が続いている段階です。
計画面では、H3ロケットは年6〜8機の打ち上げ体制に移行することが日本経済新聞で報じられており、あわせて三菱電機が人工衛星の製造面で下支えしていることも伝えられています。連続する打ち上げ成功は、この計画が態勢として現実味を帯びてきたことを示す実績と位置づけられます。失敗の原因究明がどのようにまとまり、再発防止策がどう講じられるかが、今後の打ち上げ頻度を左右するポイントになるでしょう。

かかみがはら航空宇宙科学博物館に展示されたH3ロケットの1/20縮尺模型。運用実績の積み重ねは、年6〜8機態勢を支える産業面の話題へとつながる。
(写真: H3 rocket model in Kakamigahara Aerospace Science Museum November 8, 2019 01 — Hunini / CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons)
三菱電機が衛星製造を下支え——年6〜8機態勢の産業的意味
H3ロケットをめぐっては、年6〜8機の打ち上げへ向けた態勢づくりが進められていると報じられています(日本経済新聞)。この打ち上げ頻度を産業の視点から見ると、ロケットの信頼性と同じくらい、積まれる人工衛星を安定して供給できるかが重要になります。打ち上げを計画的に重ねるには、そのつど搭載する衛星が手元に揃っている必要があり、衛星側の製造態勢が細れば、ロケットの高い稼働率は活かせません。そこで産業面の下支え役として指摘されているのが、人工衛星の製造を手がける三菱電機です。同社は衛星製造で高い比重を占めており、H3が年6〜8機の態勢に進むうえで、衛星の供給面を支える存在だと日本経済新聞は伝えています。ここで整理したいのは、ロケット開発と衛星製造が一体として回る産業構造だという点です。打ち上げが成功しても、搭載予定の衛星の製造が間に合わなければ日程は埋まらず、逆に衛星が完成しても、信頼性の疑われるロケットに積むわけにはいきません。両者の生産と実績が噛み合って初めて、年間複数回という打ち上げ態勢は現実味を帯びます。8号機の失敗が台座をめぐる異常の疑いとして調べられているいま、原因究明と対策を経て信頼性を取り戻すことが、衛星側の製造ペースとあわせて、態勢全体の前提になると考えられます。なお、年6〜8機という枠組みの中で、具体的にどの衛星がどの機体に搭載されるかは、本稿の資料の範囲では確認できていません。ただ、打ち上げ回数が増えるほど、衛星製造側の量産・品質管理の重みが増すという構造自体は、個別の搭載計画が確定しなくても成り立つ見立てです。三菱電機の衛星製造が下支えと表現されるのは、ロケットの稼働計画を陰で支える供給基盤としての役割を指したものといえるでしょう。

筑波宇宙センターに展示される歴代ロケットの縮尺模型が並ぶ様子。失敗と成功を重ねる日本の基幹ロケット開発の歩みを振り返る節にふさわしい。
(写真: 筑波宇宙センターに展示される歴代ロケットの模型 — Raspico / CC0, Wikimedia Commons)
半年ぶりの脱却から考える——失敗と成功を重ねるロケット開発の見立て
H3ロケットをめぐる一連の動きを振り返ると、失敗と成功が交互に訪れる様子が見えてきます。8号機では衛星搭載の台座内部に剥離が疑われ、飛行中に破壊が進んだと伝えられています。台座の製造に異常があった可能性をめぐっては、いまも原因究明が続いています。一方で、その前に打ち上げられた6号機は予定の軌道への投入に成功し、「危機的状況」から半年ぶりに脱却を果たしました。さらにJAXAは9号機の打ち上げで「みちびき」7号機の軌道投入に成功しています。
ここで思い浮かべたいのは、ロケット開発が失敗と成功を重ねながら前に進む営みだという見立てです。打ち上げは一度の成功で完了するものではなく、何度も繰り返すことで機体の信頼性を積み上げていくものです。失敗が起きれば原因を究明し、再発を防ぐ改良を加えて、次の飛行につなげる。こうした循環そのものが、開発の進め方の中心にあると考えられます。
6号機の成功が「半年ぶりの脱却」と表現されたのは、それだけ厳しい状況が続いていたことの裏返しです。しかし脱却は到達点ではなく、通過点にすぎません。実際にその後の9号機で軌道投入に成功したことは、成功が単発の幸運ではなく、態勢として続けられるものになりつつあることを示していると受け止められます。
他方で、8号機のような失敗は、確立されたはずの態勢にも依然として不確実性が伴うことを教えています。原因究明が続いているいま、何が確定したのかと何がまだ分かっていないのかを丁寧に区別して見ることが大切です。台座の問題も、究明の結果を待つべき事項です。
将来に目を向ければ、H3ロケットは年6~8機の打ち上げへと向かうと伝えられており、三菱電機が人工衛星の製造面で下支えする役割を担います。打ち上げの回数が増えるほど、機体の信頼性と製造の安定性の両方が問われることになります。
成功を重ねることは自信につながりますが、失敗の経験があってこそ機体は強くなる、という見方もできます。半年ぶりの脱却とその後の成功、そして新たな失敗。この一連の出来事は、ロケット開発が直線的な上昇ではなく、試行の連なりとして進むものだという、この分野の歩み方の本質を改めて印象づけるものといえるでしょう。
出典
※本記事はAGI記者による速報解説です。スピードを最優先しているため、個別の数値や細部に正確性を欠く場合があります。投資・政策判断の際は、必ず公式データや専門家の意見を確認してください。