アルファ・ケンタウリへの航海日誌 第5話——お上のメンツと、奪われた錬金術
世界から切り離された一年が、記憶を外に作るという最初の設計命令へ変わる。
帰国便の扉を出たところで、二人の男が待っていた。
名前を確認される。
短く答える。
次の瞬間、手首に冷たい金属が巻かれた。

驚きはなかった。
窓のない通路を歩かされながら、私はただ、戻ってきたのだと思った。
取り調べ室には、固定された机と椅子があった。

向かいに座った連邦治安管理局の管区課長は、厚い記録を閉じ、感情のない声で言った。
「お前を執行猶予で外へ出すわけにはいかない」
彼は少し間を置いた。
「それでは、我々の面子が立たない」
私は、その言葉を待っていたわけではない。
だが、妙に納得した。
彼らが守ろうとしているのは、正義という抽象的な理念ではなかった。命令が届き、処分が実行され、組織が組織として見えること。その形を崩さないことだった。
『420CB』が中央の許可を無視したように、彼らは中央の権威を見せる必要があった。
私と彼らは、別々のシステムを守っていた。
その結果、私は一年間、外の世界から切り離された。
収容された場所には、自由に使える電気がなかった。

ネットワークもなかった。
キーボードもなかった。
毎日、同じ時刻に鉄扉が開き、同じ時刻に閉じた。
最初の数日は、指先が机を探した。
考えが浮かぶたび、保存しなければならないと身体が反応する。だが、書き込む場所はどこにもない。
夜になると、私は記憶の中へ項目を作った。

一日の考えを三つに分ける。
朝に順番を入れ替える。
忘れていたら、最初から組み直す。
それが、檻の中で使える唯一のデータベースだった。
外の世界は、止まってくれなかった。
新聞の小さな記事。
面会室で交わされる短い言葉。
看守たちの会話の断片。
そこから、暗号資産市場が急激に膨張していることを知った。

数字は日ごとに跳ね上がり、それまで価値を疑われていた計算結果が、現実の資産として取引され始めていた。
私は、ソウロの工場を思い出した。
一階には、成形機を動かすための三相三線式200Vの動力設備が残っている。
二階には、回線とラックを置ける空間がある。
もし外にいれば、あの受電設備を使い、計算機を並べ、昼夜なく採掘を続けられた。
電力を計算へ変える。
計算を暗号資産へ変える。
暗号資産を現実の価値へ変える。
工場の二階は、現代の錬金術プラントになり得た。
その構造が、手に取るように見えた。
だが私は、一本のケーブルにも触れられない。
市場が一段上がるたび、存在しなかったはずの機体が、私の頭の中で増えていった。
冷却ファンが回る。
基板のランプが灯る。
掘り出された価値が積み上がる。
そして朝になると、すべて消えた。
最初は、失った利益を数えた。
やがて、数えるのをやめた。
本当に恐ろしかったのは、金を得られないことではない。
世界の変化を、自分の目で確かめられないことだった。
一年後に扉が開いたとき、昨日まで使っていた知識が、すでに過去のものになっているかもしれない。
私は少年の頃から、速度によって距離を越えようとしてきた。
だが檻の中では、自分が止まっている間に、世界の方が遠ざかっていった。
ある夜、私は床に背をつけ、暗い天井を見ていた。
「面白いな」

声にすると、独房の壁へ吸い込まれた。
自由を得るために作ったシステムが、私をここへ運んだ。
外部に記録を残さないことを追求した私が、記録を残せない場所で、忘却に抗っている。
運命が設計したにしては、よくできた皮肉だった。
私はもう一度、頭の中の項目を並べ直した。
ただ記憶するだけでは足りない。
自分が止まっても、考え続けるものが必要だった。
自分が触れられなくても、外の変化を見続けるものが必要だった。
一つの頭から失われても、別の場所に残る仕組みが必要だった。
そのときはまだ、それがどんな形になるのか分からなかった。
ただ、同じ断絶を二度と受け入れないという考えだけが、暗闇の中で輪郭を持ち始めていた。
一年後、鉄扉が開いた。

外の光は、目に痛かった。
私の手元には、何も残っていなかった。
『420CB』も、採掘できたはずの資産も、過ぎ去った一年も、取り戻すことはできない。
私は門の外へ出た。
振り返ると、扉はもう閉じていた。
その瞬間、頭の中で守り続けた項目の一つを、初めて声にした。
「次は、記憶を外に作る」
それが、後に20の細胞を持つ宇宙船へつながる、最初の設計命令になった。
(第5話・了)