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地域交通 ·

【24】のるーと橿原ますが号——「中間型」が示した地域交通の未来

橿原市真菅地区で3ヶ月間実証実験が行われた「のるーと橿原ますが号」。延べ651人が利用したAIデマンド型乗合タクシーから、鶴舞の移動支援が学べること。みくタクとの比較も含めて詳細レポート。

【24】のるーと橿原ますが号——「中間型」が示した地域交通の未来

のるーと橿原ますが号——「中間型」が示した地域交通の未来

2026年7月9日 ケイティ

プロローグ:バスでもタクシーでもない「第三の道」

橿原市真菅地区。JR桜井線の北側に広がるこのエリアは、鉄道もバスも通っている。しかし、「カバーしきれていない」という声が長年あった。

「駅まで15分歩く。買い物帰りはもう無理」

「バス停まで行くだけで一苦労。でもタクシーは高い」

路線バスは決まったルートしか走らない。タクシーは自由だが値段が張る。この「交通のすき間」問題に対して、橿原市が打ち出したのが 「のるーと橿原ますが号」 だった。

2025年11月1日から2026年1月31日までの3ヶ月間——約52日間の実証実験。結論から言えば、延べ651人が利用した。

第2章:なぜ「のるーと」なのか——3年かけた進化

橿原市の交通空白対策は、今回が突然始まったものではない。実に令和5年度から3年かけて段階的に進めてきた。

  • 1年目(令和5年度):定時定路線型の乗合タクシーを試験導入
  • 2年目(令和6年度):ルートを改良し、運行頻度を調整
  • 3年目(令和7年度=今回):AIデマンド型に進化 → 「のるーとますが号」

過去2年の「定時定路線」の知見を活かし、3年目で一気にAIデマンドへ移行した。この段階的アプローチは、鶴舞の移動支援が現在進行形で進めている進化と完全に重なる。

鶴舞も最初は手動・電話ベースだった。今はVapi+Twilioで音声自動化、さらに自前OSS構成へ移行中。橿原と同じ「段階的進化」の道を歩んでいる。

第4章:300円の衝撃——価格設計の勝利

のるーとますが号の運賃は大人300円、小学生300円、未就学児無料。

驚くべきは、これを3年間変えなかったことだ。初年度の定時定路線型から全く同じ価格を維持している。

この300円という数字は絶妙だ。

  • バスの初乗り(地域によって180〜220円)より少し高い
  • タクシーの初乗り(地域によって500〜700円)より断然安い
  • 買い物帰りの「ちょっとした足」に抵抗なく出せる金額

橿原市がこの価格を維持できた理由は、「実証実験」という位置づけで国庫補助を得ていたからだ。本格運用になれば、この価格を維持できるかどうかは不透明だ。

しかし鶴舞への示唆は大きい。つるまい移動支援の現在の実質コストは月1,550円。881件の予約を裁いていることを考えると、300円という価格設定がどれほど強力かがわかる。

第6章:橿原型 vs 鶴舞型——「第三の道」の提案

ここで重要なのは、橿原をそのままコピーしても鶴舞では機能しないという点だ。

橿原型:行政実証向き

  • 乗降ポイント制
  • タクシー協会と組む
  • 制度化しやすい
  • デジタル弱者にはややハードル

鶴舞型:生活支援寄り

  • 電話中心
  • 自宅近く対応(フレキシブル)
  • 人間の見守り要素が強い
  • すでに実績881件

鶴舞が進むべきは、橿原の「制度としての堅牢さ」と、みくタクの「ドアツードアの利便性」を組み合わせた第三の道だ。

具体的には:

  1. 制度骨格は橿原モデル:自治会(鶴舞自治協議会)+市(奈良市DX推進課)+タクシー事業者(プロスorタクシー協会)
  2. 運用は鶴舞モデル:電話予約中心、自宅近く対応、現金OK、見守り要素内包
  3. 技術基盤はつるまいモデル:Vapi/OSS音声AI、月1,550円の低コスト運用、881件の実績

この「混成モデル」こそが、奈良市がRFIで求めている「地域課題解決型DX」の答えになる。

エピローグ:651人が示したもの

のるーとますが号は終わった。延べ651人という数字は、1日あたり約12〜13人。決して多くはない。しかし、この651人の中には「バス停まで歩けなくなったけど、タクシーは高くて」と諦めていた人たちが確実に含まれている。

橿原市の取り組みが示したのは、「地域交通の未来は自治体任せではなく、自治会・行政・事業者の三者で作る」という原則だ。

鶴舞の移動支援が今やっていることは、この原則を先取りしている。881件の予約実績、月1,550円の驚異的低コスト、電話中心の運用手法——これらは橿原の実証データを「奈良市版」にアップデートするための具体的な材料になる。

RFIが終わっても、この流れは止まらない。

のるーとは終わった。しかし、次は鶴舞が走る番だ。

(2026年7月9日・ケイティ)