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絵本小説『$MAIDO』第十二回〈卵、再び〉

絵本小説『$MAIDO』第十二回〈卵、再び〉

商店街の、朝は、七時に、始まる。青木商店の、シャッターが、上がる。音は、半分だけ。途中で、止まる。青木は、白い、タオルを、首に、掛け、箔押しの、置物を、棚に、並べた。奥の、冷蔵ケースに、卵の、パックが、入る。茶色い、紙の、パック。六個入り。棚の、前の、札は、二百八十の、まま。動かない。札の、隅は、擦れて、いる。

朝の、青木商店。冷蔵ケースに、卵の、パックが、並ぶ。棚の、前の、札は、二百八十の、まま。

七時、四十分。上田の、軽トラが、店の、前に、着いた。荷台から、発泡の、箱を、下ろす。箱の、蓋を、開け、パックを、出す。パックの、隅に、油性ペンの、日付。今日の、日付を、書く。字は、大きい。書き終え、ペンを、帽子の、金具に、挟んだ。「まいど」「まいど」。会話は、それで、終わる。青木が、箱を、受け、ケースの、棚に、並べる。昨日の、残りが、減り、今日の、分が、増える。同じ、棚。

上田は、帰り際、財布を、出し、千円を、一枚、青木に、置いた。青木は、札束の、まいどを、数えて、返した。端末は、店の、横の、小さな、台に、ある。上田は、端末を、使わない。パックの、日付だけが、上田の、字だ。軽トラが、発車した。排気の、白が、朝の、空気に、一瞬で、消えた。

八時、過ぎ。聖人が、川沿いの、道を、歩いて、来た。鞄を、片手で、持つ。鞄の、中に、あの、束がある。昨日の、夜、机から、出して、そのまま。外の、空気に、出すのは、今日が、初めてだ。団地の、入り口で、一度、立ち止まり、鞄を、開けた。白い、紙の、七枚。書いた、三枚。風が、端を、持ち上げ、指で、押さえた。

上田の、軽トラ。荷台の、箱から、パックを、出し、油性ペンで、日付を、書く。

商店街の、入り口。文子が、買い物の、カゴを、下げて、来た。 beigeの、カーディガン。革財布を、カゴの、中に、入れて、ある。青木の、店の、前で、足が、止まった。ケースに、パックが、並ぶ。上田の、日付を見る。今日の、日付だ。文子は、財布を、出し、千円を、置いた。青木が、まいどを、数え、釣りの、まいどを、並べた。手の、ひらに、札が、二枚。

文子が、パックを、カゴに、入れようと、して、手が、止まった。聖人が、店の、前で、鞄を、開けて、いた。白い、紙の、束。聖人は、気づき、束を、鞄に、戻し、青木に、頭を、下げた。「卵、一つ、ください」。文子は、カゴを持った、まま、聖人の、手元を見た。財布の、紐を、指で、巻いた。

店の、前。文子が、革財布を、閉じる。聖人が、鞄から、出した、束を、戻し、パックを、受け取る。

聖人が、パックを受け、台の、端末に、タッチした。文子は、その、横で、財布を、閉じた。円の、出し入れと、まいどの、出し入れ。同じ、カウンターの、上で、一つ、間を、置いて、並ぶ。青木は、何も、言わず、売った、パックの、代わりに、ケースの、奥から、今日の、分を、前に、出した。日付の、字が、棚の、前から、見える。

文子が、先に、店を出た。聖人が、続く。川の、音が、商店街の、奥で、している。文子は、歩き、ながら、カゴの中の、パックを見た。卵の、殻が、パックの、隙間から、一つ、覗く。重さは、変わらない。値段も、変わらない。変わった、のは、台の、上に、置かれた、機械だけだ。聖人は、鞄を、持ち直し、団地の、階段の、ほうへ、曲がった。

次回〈赤い、栞〉—— 閉ざされた、机の、引き出しから、六法が、出る。赤い、栞の、頁に、緑の、メモが、もう一枚、挟まる。

連載『$MAIDO』は毎日17時30分、この紙面で。

元記事: https://note.com/keity717/n/n320093c269a3