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絵本小説『$MAIDO』第15回〈通らない、束〉

絵本小説『$MAIDO』第15回〈通らない、束〉

朝の、団地。聖人は、机の、上で、束を、持ち直した。白い、紙の、七枚。役所で、読んでもらえた、束。今日は、別の、行き先だ。鞄に、入れ、階段を、降りる。川の、向こうで、商店街の、シャッターが、順に、上がる音が、する。空気は、ひんやり、している。自転車に、乗らず、歩く。川面に、朝の、光が、細く、落ちて、いた。

朝の川沿い、束を持って歩く聖人の後ろ姿。遠くに商店街のシャッターが上がる

一軒目は、八百屋。店の、主人が、白菜の、外葉を、剥いて、いる。聖人は、束を、出し、一言、説明した。一まいどは、一円。増えない。減らない。主人は、手を、止め、最初の、頁だけ、読んだ。三つの、行。読み終え、束を、返す。うちは、来た、客が、決める、と、言う。束を、白菜の、箱の、上に、置き、作業に、戻った。聖人は、頭を、下げ、外へ。店の、前の、値札が、風で、揺れた。

二軒目。酒屋。女将が、ビールの、ケースを、棚に、積む。束の、頁を、めくる。途中で、指が、止まる。世帯は、数百、と、いう行だ。女将は、この、数字が、増える、方向か、と、聞く。増えない、が、約束だと、聖人は、言う。女将は、ケースを、一段、積み、考えとく、と、言った。聖人は、束を、持って、出た。棚の、奥で、冷蔵の、灯りが、点いた、ままだった。

三軒目、青木商店。青木は、卵の、ケースの、前で、帳面を、開けて、いた。聖人が、束を、出すと、タオルで、手を、拭い、受け取った。読む、時間が、かかった。帳面の、右の、頁と、束の、行を、見比べる。数字が、合う。青木は、束の、端を、卓に、叩き、一枚だけ、破り取った。店の、数の、頁だ。裏に、鉛筆で、丸を、三つ、書く。うち。隣の、八百屋。もう、一つは、上田。ここは、動く、と、言った。

青木商店のカウンターで束を読む青木。帳面を見比べ、鉛筆で丸を書く手元

昼過ぎ。上田の、軽トラが、また、来た。積み忘れの、パックを、一つ、届けに、来た、のだ。青木は、破り取った、頁を、上田に、見せた。上田は、帽子から、油性ペンを、抜き、頁の、空きに、字を、書く。鶏の、数。日々の、卵の、数。書き終え、ペンを、戻す。字の、いない、頁を、一枚、破り、カゴに、入れた。うちの、分も、置いて、行く、と、言う。軽トラの、荷台に、空の、発泡の、箱が、一つ、鳴った。

夕方。文子が、団地の、共用の、掲示板の、前に、立った。板には、回覧の、紙が、数枚。その、端に、白い、紙が、一枚。三つの、短い、行。文子は、財布を、出し、まいどの、札を、一枚、指で、挟んだ、まま、読んだ。読み終え、札を、財布に、戻し、紙の、隅を、指で、撫でた。廊下の、灯りが、点く。階段を、上がり、自分の、扉の、前で、鍵を、探した。

夜、聖人の部屋。机の灯りの下、束にクリップを挟む後ろ姿

夜。聖人の、部屋。机の、上に、束が、戻る。六枚。破られた、一枚の、代わりに、上田の、字の、写しが、青木から、渡されて、いた。聖人は、それを、束の、後ろに、挟み、クリップを、かけた。窓の、外に、商店街の、灯りが、一列。机の、灯りが、束の、上に、落ちる。三つの、丸印。上田の、太い、字。束は、まだ、通らない。厚みだけが、少し、増えた。聖人は、ペンを、置き、頁の、白い、部分を、見た。

次回〈二枚の、札〉—— 文子の、財布から、まいどの、札が、一枚、抜ける。抜けた、跡に、古い、領収書の、折り目が、残る。

連載『$MAIDO』は毎日17時30分、この紙面で。

元記事: https://note.com/keity717/n/n8b61f57d476c